QUARRY / RARITY
100トンの山から、数トンの石を選ぶ。庵治石が希少な理由。
採れる量と、選び抜ける量は違う。
TABUCHI /
採石場に立つと、目の前には大きな岩盤が広がっています。これだけ石があるのに、なぜ庵治石は希少なのか。その答えは、山から採れる石の量と、求める製品に使える石の量が、まったく違うことにあります。
01
100トン採れても、使える石は数トン。
一度の発破で、およそ100トンの石を採る。その中から、つくろうとする製品の条件を満たす石を選ぶと、数トンほどしか残らない。
これは、田渕石材の採石現場で見られる一例です。
石は、工場で同じ品質にそろえて製造する材料ではありません。山の中には亀裂があり、色や模様の違いがあり、外からは見えない傷が潜んでいることもあります。
大きな塊を取り出せたとしても、そのまま大きな製品にできるとは限りません。割り、切り、内部を確かめる過程で、使える範囲が見えてきます。
採れた量ではなく、必要な大きさと品質を満たして残る量。その少なさが、庵治石の希少性につながっています。
※採石量や使用できる割合は、岩盤の状態、採掘箇所、製品の寸法・品質条件によって変わります。また、選別から外れた石のすべてが廃棄されるという意味ではありません。
02
同じ庵治石にも、品質の違いがある。
「庵治石」という名前だけで、すべてが同じ品質というわけではありません。
石の目の細かさ、色合い、斑(ふ)の現れ方、傷の有無、必要な寸法を取れるかどうか。さまざまな条件を見ながら、用途に合う石を選びます。
その中でも、最高級として求められる条件がそろう石は、限られた部分からしか得られません。
見える面が美しいだけでは足りないこともあります。大きな製品なら、内部まで必要な状態が続いていることが求められます。複数の部材を組み合わせるなら、それぞれの色や模様の調和も重要です。
美しい一面があることと、一つの製品をつくれることは、別の条件なのです。
なお、グレードの呼び方や評価基準は、扱う事業者や用途によって異なります。名前だけではなく、実際の石を見て確かめることが大切です。
03
数十メートル先には、別の表情がある。
同じ山で採れる石でも、採掘する位置が数十メートル変わるだけで、色合いや模様が変わることがあります。
粒の見え方、グレーの濃淡、斑(ふ)の表情。ひと続きに見える岩盤の中にも、違いがあります。
だから、以前と同じ場所の近くを掘れば、同じ石が必ず出てくるわけではありません。気に入った一石と、まったく同じ表情の石を、必要なときに必要なだけそろえることも簡単ではありません。
石を選ぶ仕事には、写真や品番だけでは伝わらない判断があります。
どこに傷があるか。どの面を見せるか。どこを残し、どう切り出すか。
山を知り、石を見続けてきた職人の経験が、その判断を支えています。
04
最高級の石だけが、面白い石ではない。
ここで、もう一つお伝えしたいことがあります。
従来の製品で高く評価される石と、ある空間で魅力を発揮する石が、必ずしも同じとは限らないということです。
均一な色合いを求める製品では選ばれなかった濃淡が、壁では豊かな表情になる。茶色を帯びた石肌が、木や植物のそばで美しく見える。不規則な輪郭が、テーブルやオブジェの個性になる。
もちろん、傷や亀裂を無条件に生かせるわけではありません。安全性や使用条件を確認したうえで、これまでとは違う価値の見つけ方を考えます。
希少な石を選び抜くことと、一つひとつの石に使い道を見つけること。その両方が、石の表現を広げます。
05
石を選ぶことは、山の一部分を選ぶこと。
完成した製品だけを見ていると、その背景は見えにくいかもしれません。
目の前の一石のために、どれだけの岩盤と向き合い、どれだけの石を見極めてきたのか。
庵治石の希少性は、単に「採れる場所が限られている」ということだけではありません。山から取り出し、内部を確かめ、用途に合う部分を選び、その表情を生かして形にする。その過程の中にあります。
石を選ぶことは、山の一部分を、これからの暮らしや空間へ迎えること。
田渕石材では、石の名前やグレードだけでなく、目の前にある一石の表情から、使い方を一緒に考えます。